【年金シリーズ】
①「ねんきん定期便」チェックしてますか?
②日本の年金制度は2階建て
③年金は男女でこんなに違う
④年金は元が取れるか?
⑤繰り上げ・繰り下げ受給って?
⑥特別支給の年金とは?
⑦働くと損?在職老齢年金制度とは?
⑧加給年金とは?条件や金額、振替加算まで解説
⑨年金の手取りはいくら?
⑩遺族年金制度とは?①もしものときのための基本
⑪遺族年金制度とは?②2025年改正で何が変わる?
⑫③夫が亡くなったら年金はいくら?モデルケースで試算 ←この記事
遺族年金が「もしものとき」のための制度であること。
また、遺族年金の計算方法や、
2025年の年金制度改正で変わるポイントなどを、
これまで2つの記事で説明してきました。
今回は、もう少し現実的に。
夫が亡くなったら、妻の年金はいくらになるのか?
3つのモデルケースを使って、実際に試算してみたいと思います。
「夫の年金の4分の3がもらえる」って本当?
こんな話を聞いたことがありませんか?
「夫が亡くなっても、遺族年金として夫の年金の4分の3がもらえる」
4分の3をもらえるなら、なんとか一人でも暮らしていけるかな。
そう思っている方もいるのではないでしょうか。
私もこのウワサをママ友から聞いたことがあります。
でも、これはちょっと違います。
夫が受け取っていた年金全体の4分の3が、
そのまま遺族年金になるわけではありません。
では、実際にはどのくらいになるのでしょう。
モデルケースで試算してみましょう。
※最初にお断りしておきます。
今回の試算は、法律上の年金額の計算方法をもとに試算したものを、
制度の仕組みがわかりやすいよう、便宜上簡単な数字にしたものです。
そのため、すべておおよその金額です。
また、イメージしやすいように年金額は月額で計算しています。
実際の年金額は、生年月日や厚生年金の加入期間、
加入中の報酬額などによって異なります。
※この記事で使用している
「老齢基礎年金6.8万円」は、制度の仕組みを説明するための簡略化したモデル上の金額です。
実際の令和8年度の老齢基礎年金満額とは異なります。
モデルケース1 出産を機に第3号被保険者になった妻の場合
まずは、妻が出産を機に会社を退職し、第3号被保険者になったケースです。
夫 68歳
20~22歳 国民年金(大学生)
23~59歳 会社員 期間中の平均年収420万円
60~65歳 会社員(再雇用) 期間中の平均年収250万円
妻 65歳
20~22歳 国民年金(大学生)
23~30歳 会社員 期間中の平均年収300万円
30~59歳 第3号被保険者
収入は扶養内パートのみ
※子どもはすでに18歳を超えています。
妻が65歳になってからは、夫婦2人で月額約23.8万円の年金を受給していました。
夫の年金受給額 15.8万円
・老齢基礎年金 6.8万円
・老齢厚生年金 9万円
妻の年金受給額 8万円
・老齢基礎年金 6.8万円
・老齢厚生年金 1.2万円
夫婦合わせて23.8万円です。
では、数年後に夫が亡くなった場合、妻はいくらの年金を受け取ることになるのでしょうか。
夫の年金15.8万円の4分の3ではありません
先ほどのウワサどおりであれば、
15.8万円×4分の3=約11.8万円
です。
妻自身の年金8万円と合わせると20万円弱。
「それなら、なんとか一人で暮らしていけそう」
と思うのも納得です。
でも、実際には違います。
この「4分の3」というのは、
夫が受け取っていた年金全体の4分の3ではありません。
基本となるのは、
亡くなった夫の老齢厚生年金の報酬比例部分です。
今回のモデルでは、わかりやすく夫の老齢厚生年金9万円を計算の基礎となる金額として試算します。
9万円×4分の3=約6.8万円
夫の年金15.8万円の4分の3ではなく、約6.8万円です。
「じゃあ、この6.8万円と自分の年金8万円で、14.8万円もらえる?」
答えはノーです。
ここに、もうひとつ決まりがあります。
自分の老齢厚生年金がある場合はどうなる?
65歳以上で、ご自身の老齢厚生年金と
遺族厚生年金の両方を受け取る権利がある場合、
ご自身の老齢厚生年金は全額支給されます。
そして、遺族厚生年金は、
ご自身の老齢厚生年金に相当する額が支給停止されます。
簡単に言うと、
「自分の老齢厚生年金を受け取り、
遺族厚生年金の方が高ければ、
その差額が遺族厚生年金として支給される」
というイメージです。
今回の妻の場合、
老齢基礎年金 6.8万円
+
自分の老齢厚生年金 1.2万円
+
遺族厚生年金6.8万円-自分の老齢厚生年金1.2万円=5.6万円
となります。
合計すると、
6.8万円+1.2万円+5.6万円=13.6万円
です。
夫婦2人のときには23.8万円だった年金が、
夫の死亡後は妻一人で13.6万円。
どうでしょう?
「夫の年金の4分の3がもらえる」と思っていた方にとっては、
ちょっと心配な金額ではないでしょうか。
なお、遺族厚生年金の年金額には、
亡くなった方の報酬比例部分の4分の3で計算する方法のほか、
一定の場合には、ご自身の老齢厚生年金を含めた別の計算方法との比較があります。
今回のモデルケースでは、4分の3で計算した金額の方が高くなるため、
約6.8万円として試算しています。
モデルケース2 夫婦ともに会社員だった共働きの場合
続いて、共働きの場合です。
夫の条件はモデルケース1と同じです。
妻 65歳
20~22歳 国民年金(大学生)
23~59歳 会社員 期間中の平均年収380万円
60~65歳 会社員(再雇用) 期間中の平均年収230万円
※途中で産前産後休業、育児休業を子ども2人分取得したものとします。
この場合の妻の年金受給額を月額約15万円とします。
妻の年金受給額 15万円
・老齢基礎年金 6.8万円
・老齢厚生年金 8.2万円
夫の年金15.8万円と合わせると、
夫婦で月額約30.8万円
を受給していました。
では、夫が亡くなったらどうなるのでしょう。
共働きの場合の遺族厚生年金は?
65歳以上で、ご自身にも老齢厚生年金がある場合、
遺族厚生年金の額には別の計算方法があります。
今回のケースでは、
夫の老齢厚生年金9万円×4分の3=6.75万円
もうひとつの計算方法では、
夫の老齢厚生年金9万円×2分の1
+
妻の老齢厚生年金8.2万円×2分の1
4.5万円+4.1万円=8.6万円
となります。
この場合は、高い方の8.6万円が遺族厚生年金の額となります。
ただし、妻にはすでに8.2万円の老齢厚生年金があります。
そのため、
8.6万円-8.2万円=0.4万円
約4,000円が遺族厚生年金として支給される計算になります。
妻自身の年金15万円に約4,000円を加えて、
夫の死亡後の年金は月額約15.4万円。
夫婦2人のときには30.8万円。
夫の死亡後は妻一人で15.4万円です。
夫婦の年金額はほぼ半分になります。
一方で、モデルケース1の妻と比較すると、
夫の死亡後に受け取る年金額は多くなっています。
自分自身の老齢厚生年金が多いほど、
夫が亡くなった後も、
自分の年金が生活を支えることになります。
共働きで厚生年金に長く加入してきたことが、
老後の自分自身の生活にもつながっているということです。
モデルケース3 夫婦ともに国民年金だけの場合
最後は、夫婦ともに国民年金だけに加入していたケースです。
夫 68歳
40年間(480月)国民年金に加入
妻 65歳
40年間(480月)国民年金に加入
今回のモデルでは、夫も妻も老齢基礎年金を月額6.8万円受給しているものとします。
夫 6.8万円
妻 6.8万円
夫婦で月額13.6万円です。
では、夫が亡くなったらどうなるのでしょう。
このケースでは、夫は厚生年金に加入していないため、妻に遺族厚生年金はありません。
また、子どもはすでに遺族基礎年金の対象となる年齢を超えているものとします。
遺族基礎年金を受け取ることができるのは、
原則として「子のある配偶者」または「子」です。
そのため、このケースでは夫が亡くなっても、
妻が受け取る遺族年金はありません。
妻自身の老齢基礎年金6.8万円のみ。
夫婦2人のときには13.6万円だった年金が、
一人になると6.8万円になります。
3つのモデルケースを比べてみると
今回のモデルケースをまとめてみます。

※金額はすべて月額の目安です。制度の仕組みをわかりやすく説明するための簡略化したモデルケースであり、実際の年金額は加入状況・生年月日・家族構成などにより異なります。
こうして比べてみると、かなり違います。
特に見ていただきたいのが、モデルケース1とモデルケース2です。
出産を機に第3号被保険者となった妻と、
出産後も厚生年金に加入し続けた妻。
夫の年金額は同じでも、
夫が亡くなった後に受け取る年金額には差が出ています。
そして、どのケースにも共通しているのは、
夫婦2人で年金を受け取っているときと、
どちらか一人になったときでは、
世帯に入る年金額が大きく変わる
ということです。
「夫の年金の4分の3がもらえる」と思っていませんでしたか?
「夫が亡くなったら、夫の年金の4分の3がもらえる」
私も以前、そんな話を聞いたことがありました。
でも、実際の遺族厚生年金は、
夫が受け取っていた年金全体の4分の3ではありません。
また、自分自身に老齢厚生年金がある場合には、
自分の老齢厚生年金との調整もあります。
つまり、
夫が亡くなった後にいくら年金が残るのかは、
夫の年金額だけを見てもわからないのです。
夫の厚生年金はいくらなのか。
自分自身の厚生年金はいくらなのか。
国民年金だけなのか。
夫婦それぞれの年金の加入歴によって、結果は大きく違います。
まとめ|一人になったときの年金額を一度考えてみませんか?
老後の生活費を考えるとき、
「夫婦で毎月いくら年金がもらえるか」
は、多くの方が確認していると思います。
でも、もうひとつ。
「どちらか一人になったとき、毎月いくらの年金になるのか」
これも、一度確認しておいた方がいい数字なのではないでしょうか。
夫婦2人から一人になれば、食費や光熱費は減るかもしれません。
でも、家賃や住宅にかかる費用、固定資産税、通信費など、単純に半分にはならない支出もたくさんあります。
「夫の年金の4分の3がもらえるから大丈夫」
そう思っていたら、実際の金額とは大きく違った。
そんなことにならないように。
ご自身の年金額だけでなく、
もし一人になったら年金はいくらになるのか。
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」なども利用して、一度考えてみるのも大切かもしれません。
※遺族年金の受給要件や年金額は、個々の加入状況、生年月日、家族構成などによって異なります。実際の受給額については、日本年金機構や年金事務所等でご確認ください。
【出典】
日本年金機構「遺族年金」
日本年金機構「遺族年金ガイド」
日本年金機構「年金の併給または選択」
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