これまで、フレイルやアイフレイル、オーラルフレイルについて調べながら記事を書いてきました。
体や目、口の働きについて知るうちに、もうひとつ気になってきたのが**「認知機能の衰え」**です。
使い慣れている言葉のはずなのに、
「あれ、なんて言うんだっけ?」
こんなことが、年齢とともに少しずつ増えてきました。
そんなときに知ったのが、**MCI(軽度認知障害)**という言葉です。
認知症とは何が違うのか。普通のもの忘れとは?
そして、早く気づくことでできることはあるのでしょうか。
今回は、厚生労働省の『あたまとからだを元気にする MCIハンドブック』などを参考に調べてみました。
「あれ、あの人!」名前が出てこない
人の名前が出てこないことって、意外と若い頃からあると思うんです。
でも、年齢とともに明らかに増えてきます。
友人たちと話していても、
「あれよ、あの女優さん。あのドラマに出てた」
「あ、あの日曜劇場の?」
……とか、もうなぞなぞ状態(笑)。
不思議なのは、そのドラマの内容はしっかり説明できるんですよね。
なのに、女優さんの名前とドラマの題名が出てこない。
もうちょっと進んでくると、「その現象」についてはわかっているのに、それについている名前が出てこない。
例えば「PTSD」とか。
私の場合、幸い仕事に関係することで困ることはほとんどないのですが、日常生活になると「?」と思うことが増えてきています。
人の名前はいざ知らず、普通に使っていたはずの名詞まで出てこないと、なんだかがっかりして心配になります。
以前テレビ番組で、「思い出せないときも、すぐに答えを見るのではなく思い出そうとしてみる」というような話を聞いた記憶があって、私も必死で考えます。
そして、全然関係ないことをしているときに、
「あ!」
と思い出してホッとする(笑)。
でも、久しぶりとはいえ、よく知っているはずの人の名前が思い出せなかったり、普通に使っていたはずの名詞がするっと出てこなかったりすると、本当にショック。
「これは認知症の入口か?」
と、密かにドキドキしています。
MCI(軽度認知障害)とは?
そんなときに出会った言葉が「MCI」。
聞いたことがありますか?
MCIとは、
Mild Cognitive Impairment(軽度認知障害)
の略です。
厚生労働省のMCIハンドブックでは、MCIは**「認知症そのものではない。しかし健常な状態でもない」認知症と健常な状態の中間のような状態**と説明されています。
介護が必要になる前の段階である「フレイル」と、ちょっと似ていますよね。
MCIと認知症は何が違う?

では、「MCI」と「認知症」はどう違うのでしょう。
大きな違いのひとつが、日常生活への影響です。
MCIでは、同年代の人と比べて認知機能の低下がみられても、基本的な日常生活は自立して送ることができます。
ただし、新しいこと、新しいものは苦手で、日常生活もテキパキと行うことは難しくなっている状態です。
一方、認知症になると、認知機能の低下によって、お金の管理や買い物、食事、服装など、これまで一人でできていた日常生活に支障が出てきます。
つまり、
認知機能は以前より低下している。でも日常生活は基本的に自分で送れている。
ここがMCIを考えるうえでの大きなポイントです。
「年齢によるもの忘れ」と「認知症」は違う
加齢による「もの忘れ」と認知症の違いとして、よく紹介される例があります。
例えば昨日の夕食。
「昨日の夕飯、何食べたっけ?」
これは、食べたことは覚えているけれど、内容を思い出せない状態。
体験したことの一部を忘れている状態です。
一方、
「昨日、夕飯なんて食べていない」
となると、食事をしたという体験そのものを忘れている可能性があります。
もちろん、これだけで認知症かどうかを判断することはできません。
「最近ちょっと忘れるな」と感じたからといって、すぐに認知症やMCIというわけでもありません。
チェックリストは「気づくための目安」
では、自分がMCIかどうか、簡単にチェックする方法はあるのでしょうか。
認知機能の変化に気づくためのチェックリストはいろいろありますが、
チェック項目がいくつ当てはまったからMCI、というように自己診断できるものではありません。
上のチェックリストも、自分や家族が変化に気づくためのひとつの目安として考えたほうがよさそうです。
気になる変化が続いたり、生活の中で困ることが出てきたりした場合は、医療機関に相談することが大切です。
最近は「もの忘れ外来」を設けている医療機関も見かけますよね。
実は私の内科の主治医も、もの忘れ外来を実施していました。
気になる場合は、お住まいの自治体の相談窓口や、地域の医療機関を調べてみるのもよいと思います。厚生労働省も認知症に関する相談先を案内しています。
MCIになったら必ず認知症になる?
ここは、今回調べてみて私が一番気になったところです。
MCIと診断されたら、そのまま認知症に進んでしまうのでしょうか?
実は、そうとは限りません。
MCIの状態から認知症へ進む人がいる一方で、
MCIの状態を維持する人もいれば、健常な状態に戻る人もいます。
厚生労働省のMCIハンドブックでも、運動や食生活などの対策を行うことで、健常な状態に戻ることがあると説明されています。
だからこそ、MCIの段階で自分の状態に気づくことが大切なんですね。

※出典:厚生労働省『あたまとからだを元気にする MCIハンドブック』を参考に筆者作成
認知機能を保つためにできること
では、何をしたらいいのでしょう。
厚生労働省のMCIハンドブックを読んでいくと、
生活習慣病、運動、食事・栄養、社会参加などについて、それぞれ詳しく紹介されています。
ざっくりまとめると、
- 生活習慣病をきちんと管理する
- 適度に体を動かす
- バランスよく食べる
- 人との交流や社会参加を大切にする
……あれ?
これって、フレイル予防とほとんど一緒では?
そうなんです。
調べれば調べるほど、これまで記事にしてきたフレイル予防と重なるところがたくさんありました。

こちらの記事でも詳しく書いています。
「60代、フレイルを考える②」|フレイルは戻れる?
「60代、フレイルを考える③」|今からでも遅くない、“栄養”と“運動”の話
「60代、フレイルを考える④」|人とのつながりと“お口の健康”も大切でした
健康というのは、体に対しても頭に対しても、大事なところはつながっているんですね。
頭を使うことも大切
運動や食事、人との交流だけでなく、頭を使う活動を生活の中に取り入れることも研究されています。
脳トレゲームやボードゲーム、楽器の演奏や歌などの音楽活動、絵や書道などの芸術活動。
楽しみながら頭を使えるものはいろいろあります。
ただし、「これをやれば認知症にならない」と言えるものではありません。
効果については研究が続いているものもあるので、特定の方法だけに頼るのではなく、運動・食事・人との交流なども含めて、生活全体を整えていくことが大切なのだと思います。
認知症治療も変わり始めている
そんな中、目を引いたニュースがありました。
アルツハイマー病の新しい治療薬が登場したというニュースです。
近年登場したのが、
「レカネマブ(商品名:レケンビ)」と「ドナネマブ(商品名:ケサンラ)」
という薬です。
これらは「抗アミロイドβ抗体薬」と呼ばれ、アルツハイマー病に関係すると考えられている脳内のアミロイドβを標的とする薬です。
日本でも、アルツハイマー病によるMCI(軽度認知障害)や軽度の認知症の進行を抑える治療薬として使われています。
ここで大事なのは、MCIなら誰でも使える薬ではないということ。
アルツハイマー病によるMCIや軽度認知症であることに加え、アミロイドβが脳内に蓄積していることなどを検査で確認し、治療の対象になるかどうかを専門の医療機関で判断します。
そして、今の段階では、
「認知症になっても、この薬を使えば治る」
という薬ではありません。
認知機能や日常生活機能の悪化を遅らせることを目的とした治療です。
それでも、認知症の治療は少しずつ変わってきています。
今後さらに研究が進み、今よりもっと治療できる時代が来ることを期待したいところです。
ただ――。
現在62歳の私に、どこまで新しい治療が間に合うのかはわかりません(笑)。
だったら今の私にできることは、未来の新薬を待つことではなく、
まず、自分の状態を知ること。
そして、今できる予防をすること。
MCIは、まだ基本的な日常生活を自分で送ることができる段階です。
だからこそ、
「ちょっと最近、忘れることが増えたかな?」
という小さな変化を、全部「年だから」で片づけず、自分の認知機能にも時々目を向けてみる。
そして、体を動かす。
きちんと食べる。
人と会って話す。
楽しみながら頭を使う。
調べてみると、結局それは、これまで書いてきた**フレイル予防と同じ「元気に年を重ねるための生活」**につながっていました。
60代の健康について色々なテーマでまとめています。
60代の健康|記事一覧
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