遺族年金制度とは?②2025年改正で何が変わる?|60代からの年金の話⑪

お金のこと

【年金シリーズ】
①「ねんきん定期便」チェックしてますか?
②日本の年金制度は2階建て
③年金は男女でこんなに違う
④年金は元が取れるか?
⑤繰り上げ・繰り下げ受給って? 
⑥特別支給の年金とは?
⑦働くと損?在食老齢年金制度とは?
⑧加給年金とは?条件や金額、振替加算まで解説
⑨年金の手取りはいくら?
⑩遺族年金制度とは?①もしものときのための基本
⑪遺族年金制度とは?②2025年改正で何が変わる?←この記事


前回は、遺族年金制度の基本的な仕組みについてお話ししました。

今回は、2025(令和7)年に成立した年金制度改正のうち、

「遺族年金制度の見直し」について解説します。

年金制度の改正

年金制度は社会や働き方の変化に合わせて見直されます。

今回の改正も、女性の就業率の向上や家族構成・ライフスタイルの多様化を踏まえ、

「働き方や男女の違いに中立な制度」を目指して行われました。

年金シリーズ
⑦「働くと損?在職老齢年金制度とは?」
でも改正内容の一部をご紹介しました。

在職老齢年金制度の見直しは、高齢になっても年金を減額されにくくし、

働き続けやすくするための改正で、2026(令和8)年4月から施行されています。

今回は、その改正の中でも特に影響が大きい
「遺族年金制度の見直し」について見ていきましょう。

今回の見直しは大きく2つ

今回の遺族年金制度の見直しは、大きく次の2点です。

  • 遺族厚生年金の男女差を解消すること
  • 子どもを養育している方への加算を充実させること

それぞれ見ていきます。

① 遺族厚生年金の男女差が解消されます

※厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」より筆者作成

現在の制度は、女性に手厚い内容となっています。

女性(妻)は30歳未満で配偶者と死別した場合は
5年間の有期給付ですが、

30歳以上で死別した場合は無期給付となっています。

一方、男性(夫)は55歳未満で死別した場合は
遺族厚生年金の支給はなく、
55歳以上で死別した場合でも受給できるのは60歳からの無期給付です。

このように、現行制度は

「男性は働いて家計を支え、女性は家庭を守る」

という時代背景を反映した制度となっていました。

改正後は男女共通の制度へ

今回の改正では、男女共通の制度となります。

60歳未満で配偶者と死別した場合は、
原則5年間の有期給付となります。

ただし、就労が難しいなど配慮が必要な場合には、

5年経過後も給付が継続されます。

60歳以上で死別した場合は、
現在と同様に無期給付です。

子どものいない女性にとっては、
これまでより厳しい改正内容となりますが、

その一方で次のような見直しも行われます。

  • 有期給付の収入要件(年間収入850万円未満)が廃止
  • 有期給付加算や死亡分割により、年金額が増額

なお、有期給付加算については、

厚生労働省では現在の遺族厚生年金額の約1.3倍程度となる例を示しています。

子どもがいる場合はどうなる?

ここまでのお話は、子どものいない場合です。

子どもを養育している間は

現在の制度がそのまま適用されます。

子どもが制度上の対象年齢
(18歳到達後最初の3月31日まで。障害のある場合は20歳未満)を超えた後は、

原則5年間の有期給付となりますが、
加算によって年金額が増額され、
必要に応じて継続給付も行われます。

現在と変更にならない方

次の方は今回の見直しの対象外、または現行制度が維持されます。

  • 60歳以上で配偶者と死別された方
  • 子どもを養育している間の方
  • 改正前から遺族年金を受給している方
  • 改正時点で40歳以上となる女性

なお、制度の施行は男性が2028(令和10)年4月から、

女性は2028(令和10)年4月から20年かけて段階的に実施されます。

② 子どもを養育している方への加算が充実します

※厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」より筆者作成

現在は、子どもを養育している年金受給者に対して、子どもの加算が支給されています。

今回の改正では、加算額の引き上げと対象者の拡大が行われます。

対象者が拡大

これまでは

  • 遺族基礎年金
  • 障害基礎年金
  • 老齢厚生年金

の受給者が対象でした。

改正後はこれに加えて、

  • 遺族厚生年金
  • 障害厚生年金(1級・2級)
  • 老齢基礎年金

の受給者にも対象が拡大されます。

加算額も大幅アップ

現在は

  • 1人目 年額234,800円
  • 2人目 年額234,800円
  • 3人目以降 年額78,300円

となっています。

改正後は、子ども1人につき年額281,700円となり、3人目以降も同額となります。

多子世帯にとっては、大きな支援となる改正と言えるでしょう。

今回の改正で感じたこと

今回の改正は、「男女差をなくす」という考え方では理解できる部分があります。

一方で、
年金シリーズ「③「年金は男女でこんなに違う」や、
「女性の働き方は変わった?②|女性活躍推進法で何が変わったのか」

でもお話したように、現実には男女の賃金差はまだ十分に解消されているとは言えません。

また、子育てなどで一度仕事を離れた女性が、
子どもの独立後に5年間で安定した収入を得られる仕事へ復帰することは、

決して簡単ではないでしょう。

制度だけを男女共通にするだけではなく、
その背景にある働き方や賃金格差も併せて改善されていくことが、

本当の意味での「男女差の解消」につながるのではないかと感じています。

一方で、子どもを養育している家庭への支援は大きく前進しました。

特に、これまで少額だった3人目以降の加算額が

1人目・2人目と同額になる点は、

多子世帯への支援という意味でも非常に大きな改正だと思います。

制度には厳しくなった部分と充実した部分の両方がありますので、自分がどちらに当てはまるのかを知っておくことが大切ですね。

次回予告|遺族年金③

今回ご紹介した制度改正を読んで、

「私たち年金世代には、実際どのくらい影響があるの?」

と思われた方も多いのではないでしょうか。

次回は、私たち60代前後のこれからの年金世代や今年金を受給している世代の方のシミュレーションを考えていきたいと思っています。


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